此れを紹介する他著によると、映画「土と兵隊」は戦時中は戦争賛美として国民に絶賛され、終戦後はアメリカから反戦映画として評価されたと云う。
しかし、この本を読んでも、私には反戦も戦争賛美も感じられない。
ただ毎日、「今日、生き残れた。」・「部隊から離れてしまったが、自分もみんなも生き残っていた」・「行軍中に多数の敵や民間人の死体が在った」・「いつの間にか最前線に入り込んで、四方から銃撃を受けた」・「被害ばかりで、なかなか敵が落ちない」と云った出来事が作者に巡って来るのが淡々と述べられている。とりわけ行軍が泥濘の中を進んで行く事から、「土と‥」と名付けられているのであろう(若しかしたら、中国戦線の泥沼状態を暗に揶揄しているのかも)。
別に、戦争が云々とか正義がどうのとかの方向に進むわけでもなく、説教臭い所がある訳でもなく、単純に「徴用された馬が不憫に思える」などと、目の前にある物事を素朴に記述しているのみである。装飾が無いが故に、読み手にとっては、そう云った素直さを自分がその隣で一緒に追体験している様に感じられる嬉しさがある。