老歌舞伎俳優 中村雅楽の探偵譚が全集にまとまった。シリーズ作の中には、直木賞や日本推理作家協会賞の受賞作をはじめ、好短編がそろっているわりにはなかなか手に取れない状態が続いていたので、なんとも嬉しい企画です。
その一冊目が本書、シリーズの代表作で直木賞を受賞した『團十郎切腹事件』、江戸川乱歩にすすめられて書いた記念すべきシリーズ一作目『車引殺人事件』などを含む短編十八作が収録されています。
新聞の芸能欄の記者 竹野がワトソン役・語り手をつとめるオーソドックスなつくりのミステリですが、探偵役が歌舞伎俳優だけに、劇場、舞台の上、楽屋など特殊な場所で起こる事件の数々、中村雅楽の鋭い推理力、そして何と言ってもその悠々たる語り口、今まで全集としてまとめられていなかったのが不思議に思えるくらい、派手さはないもののいぶし銀という言葉がぴったりの作品が並んでいます。
次巻もとても楽しみです。