團十郎丈のお話は歌舞伎の誕生、初代團十郎に始まる市川家の系譜のみならず、西洋と東洋の演劇の差違など、学者ならいくらでも難解な言葉を並べて長い講義になりそうなところを、簡潔でわかりやすく表現されています。大変な事をなんでもない事のようにこなすのは、実はとても大変な事です。さながら團十郎丈の芸のようです。歌舞伎界も宙乗りなどスペクタクルな演出が頻繁に見られますが、何よりもまず芸の精進があり、仕掛けに頼らずとも芸で見せてこそという丈の意見は大変納得できます(これは海老蔵丈への苦言もあるのでしょうが)。これらの歌舞伎概論もさる事ながら、お父上の海老さまこと十一代目團十郎丈のエピソードを時折語られるのが感慨深かったです。