戦時下なんだよね。武器が違うだけで。確かに直接的な血は流れないけど。そこで行われているのも、戦争を支えるイデオローギーの宣伝戦です。そして超債務と中央銀行によるお札の印刷の情景とそのもたらすであろうインプリケーションが冷静にたどられます。特に、もう恥も外聞もなくグロテスクなアメリカの原理主義性をあらわにして、他国を無視して、未曽有の実験に乗り出しているアメリカの描写は危機に迫ります。その相手は中国というわけですから、どこまで行っても同床異夢です。
アメリカという夢が崩壊するなかで、その夢の維持という幻想に執着して、金融資産の買い取りに乗り出しているアメリカの姿は何と言ったらいいのでしょうか。こんな傲慢で身勝手な体制の通貨にリンクせざるを得ない世界の経済体制の悲しさと喜劇性がこれでもかと指摘されます。この部分は、
The End of Influence: What Happens When Other Countries Have the Moneyの問題関心とも共通するものです。
この著作の売りは長い歴史的なパースペクティヴと著者の経験談の不思議な混合です。各章の最初に提示されている格言はその表れです。フランスのjohn lawの話もその後の政治体制の変革を示唆するものとして提示されます。金融の持つ神学性や日本とインドとの比較も面白い論点です。
著者はグローバリゼーションを前提とした中で、米ドルのジャンク化を歴史的な必然的な趨勢ととらえ、それに対するリスクヘッジとしての通貨バスケット制(SDR)への日本の斬新的な対応をとくにとどまります。