本書は、現在の国際秩序において構成原理となる価値規範を分析の対象としている。著者のいう価値規範とは、主権・国民国家・国際組織・安全保障・民主主義・人権・平和の7つの概念である。それらの概念について論じることによって、国際社会における秩序の体系を分析することが、本書の目的である。
7つの概念について、それらを歴史的な起源・変遷を交えて論じる著者の記述は、極めて興味深いものだった。特に国際社会(第1章)と主権(第2章)、国際組織(第4章)を扱った章は、様々な示唆を与えてくれた。ここでは詳細に記述することはできないが、著者の議論は、歴史的な見方に基づいて考察することによって、「国際社会」と「主権」、「国家」という3つの概念に対する一般的なイメージを変えてくれるものである。価値規範を分析する本書の議論は、H・ブルの『無政府社会』の第1部にあたるといえる。そのため、ブルの書籍と共に読み進めることによって、より国際社会を構成する価値規範についての理解が高まるといえるだろう。
最後に、「国際社会」という目に見ることができず、極めて多様で複雑な概念であるのにも拘らず、日常において常に用いられ、そして曖昧に受け止められている概念を、「具体的に」捉える必要に迫られたとき、本書はその現象を理解するための格好の入門書となるだろう。文句無しに星5つである。