岡義武教授は国鉄民営化を推し進めた葛西敬之(現、東海旅客鉄道株式会社代表取締役会長)さんの指導教官としても有名な方である。私が岡教授を知ったきっかけも、葛西さんの著作を通してであった。しかし、この著書を読み終わった今となっては、岡教授の学問的視点により興味を覚えている。
この国際政治史と銘打たれた本書はその名の通り、ウェストファリア条約の成立を国際関係の成立とみなし、冷戦期の米・ソ対立までの国際政治を取り扱っている。加えて、岡教授は俗に言う国家利益(National Interest)を中心とした国際政治のとらえ方を一つの主観的判断として退け、このような偏見を取り払った形での国際政治史を描いている。この点が本書の主題であり、岡教授はその点を意識しながら本書を書いていると個人的には感じられた。
もし、本書に関心を抱いている方がいるのであれば、購入して損をすることは無いと思う。非常に読みやすい文章であり、また、文庫化に際して古い単語は現代風に改めらめている。特に、政治や近代ヨーロッパの歴史に関心を抱いている方であれば、基本的な国際社会に対する理解の枠組みを提供してくれているので、参考になる本だと言える。
この本を読んで、より一層、国際政治に関心を持たれた方には、岡教授の他の著作やキッシンジャーの外交(上・下)を個人的にはお勧めする。また、基本的な政治学を学びたいというのであれば、バーナード・クリックの現代政治学入門も本書と合わせて読むことで、理解が深まるだろう。
最後に、個人的な感想を付言すれば、岡教授の国際政治へのアプローチは今日においても重要な意味を持ち続けていると思う。我々、一般市民は国際政治を見る際に、無意識の内に日本の国益やアメリカの国益などと単純化しがちである。確かにこのような図式は理解しやすいし、何よりも、我々の偏見というだけでは無く、世界的な通説でもある。しかし、このような図式に拘泥することは、ともすれば危険なことでもある。国家的利益が曖昧模糊とした概念であり、しばしば、個人を国家的利益の下に封殺してきたことを鑑みれば、そう言っても過言でもあるまい。
このような意味からも、岡教授の視点は重要な意味を持ちうると言えるのではないだろうか。