「自民党幹部による造語p.41」として「国益を念頭においた多角的(他国的)な事業展開というニュアンス」を包含して「1970年代中葉に作られた新しい行政用語p.8」である「国際協力」という言葉が、教科書や専門誌でどのように取り上げられることによりそのイメージが形作られてきたのか。一般のひとたちは「国際協力」という言葉にどのようなイメージを抱いているのか。「国際協力」に対する批判者と反批判者の国際協力に対する「まなざし」はどのようなものか。日本の「国際協力」における人材を育成し、その精神的支柱となった「リーダー」は、国際協力をどのようなものとして考えていたのか。
これらを丹念に検証する作業により、「地球愛に満ちたコスモポリタニズム的な言説群と経済的・政治的にラショナルな人間と国家を想定した言説群との理念的な隔絶が、国際協力という名のもとに回収され、まとめあげられているかのように見えるp.213」構造と、その要因を解き明かされている。
筆者は権力の側に立つものと反対する者、国益追求の国際協力体制を構築する者とその体制に利用される者という二項対立に議論をとどまらせることなく、国際協力の人材を育てあげてきた者はそれが保守派と呼ばれる者であったとしても基本的にヒューマニストであったことを評価するなど、常に人間に対する暖かいまなざしを失わない。
著者みずからがその当事者であった「体験」を織り交ぜながら、「国際協力」という言葉に示される取り組みに関わる人間の生き様に徹底してこだわって論を展開しているこの本は、学者にありがちな第三者的に中立を装ったスタイル、評論家またはサイードの批判する「専門家」のスタイルを否定して書かれているという点からも、「人々の国境を越えた交流・連帯が意識・実際の両面でより明示的なものとなり、・・その文脈であらためて国際協力という言葉が根源的に再定義されるp.14」ための基盤となりうる。
国際協力や途上国問題がとりあげられるとき、取り上げる者によっていかにその「視点」が様々であり、乖離し錯綜しているかを知っておかなければ、問題の見方は必ず一面的になってしまう。自らの「視点」を確かなものとしておくためにも、国際協力や途上国に興味がある人は必読の書である。
また、この本には国際協力を考える上では常識としておさえておかなければならないが習得にはかなりの労力を要する知識が沢山含まれており、その知識が自然に身につくという意味で初学者にとっても有益な本である。