本書は、著者がこれまでの著書の中で述べてきた、日本の英語教育が
抱える多くの問題点を踏まえた上で、今後の日本の英語教育が向かう
べき道筋を示した提言書といった位置づけの本である。
本書の大きな主張は2点ある。1点目は、「文法か、会話か」あるいは
「教養のための英語教育か、実用のための英語教育か」といった二項
対立的な議論をする時代はもう過ぎたということである。すなわち、
これらは両方とも重要であり、必ずしも対立するものではない、
というものである。
そして2点目は、英語が使用されている現状を踏まえ、以前の「英米の
文化を理解するための英語教育」から、「国際共通語としての英語習得」
といったパラダイムシフトが必要である、というものである。
これら2点の主張を柱にして、英語や英語教育を取り巻く現状や時代に
よる変化を分析し、言語と文化という難しい関係にもふれ、アメリカや
EUの外国語や外国語教育に対する考えを紹介しながら、英米人のネイテ
ィブ信仰や英米文化一辺倒ではない英語教育の在り方として、国際共通語
としての英語教育を提言していく。
他の著書同様、本書も、著者の主張が、分かりやすく、客観的かつ中庸
的に提示されており、そこに著者ご自身が英語に「国際共通語」として
対峙してきた体験が裏打ちされているため、説得力があるし、読んでいて
心地がいい。価値のある現実的な英語教育提言書である。