本書は、国際法的視点からイラク戦争やその他のアメリカの「戦争」の法的正当性を疑うことから始まります。そして、アメリカは自ら主導して作った国連体制下で、なぜ多国間主義ではなく単独行動主義に傾斜していこうとしているのかを、国際連盟設立時から歴史をさかのぼってみていっています。また、著者の専攻は国際機構論・国際法ですが、国際政治とアメリカ政治の視点で見ていこうとしています。
まず、ウィルソン大統領が目指し挫折した国際連盟創設期や、サンフランシスコ会議での国連憲章採択に至るまでの国連創設期において、いかにアメリカが国内の単独主義の反対勢力や国際政治の中で多国間主義を追求しようとしてきたのかということを説明します。その後、第三世界勢力の誕生の中で変化してきた国連システム、そしてその国連から離反していったアメリカについて、総会と安保理との確執・朝鮮戦争・スエズ危機・キューバ危機・ニカラグア事件の例を用いながら見ていきます。その後、湾岸戦争でいったん国連システムの下に入ったかと思わせつつも、ソマリア派兵失敗を契機として、アフガニスタン戦争・イラク戦争と国連から離反していくアメリカが描かれています。本書において鮮やかに描かれているのは、国連から離反していくプロセスにおいて、アメリカがいかに多国間枠組みを軽視し、国際法の法的正当性を踏みにじっていったという過程です。
また、現在日本で話題になっている、集団的自衛権がどのように生まれたのかについての記述もあり、アメリカと国連について歴史を通して多国間主義の観点から考えるのにはお勧めの一冊だと思います。