「教科書」は、教育学的見地からの分析ものが多いですが、こちらは文化史的、社会学的アプローチで、文化的産物としての国語教科書の議論を提供しているという点で貴重です。教科書に入れられない「ノイズ」として隅に追いやられた作品・作家の存在(第二章)、「日本文化」神話の負の遺産(一つの例は、団体的に搾取されながらも個人教育のおかげで群れをなせない労働者、第四章)、ゆとり教育の裏にあった「できない生徒は捨てていく」というイデオロギー(斎藤貴男氏のインタビューの引用などを通じて、第五章)、そして「国語」という教科の抽象化(同じく第五章)、など、興味のつきない話が盛りだくさんです。国語という教科の抽象化は、「メディア科」や「情報科」などの学科の設立、そして文学研究のその傘下への加入にも関わっていると思うので興味深く読みました。
貴重な国語教科書についての文化史的な考察ということで☆5つです。