前半の原子力発電がビジネスモデルとして破綻しているかどうかという議論は、海外試算の紹介程度で計算も議論も粗く、例もわかりにくいだけなのであまり役には立ちません。唯一、事実上の国策推進とすることで資本コストを下げていたという指摘だけ面白いと感じましたが、経済書ならば電力債金利の国債との比較と原子力発電割合の関係あたりを分析してほしいところです。
一方で後半の、五十年前の原子力損害賠償法の設立経緯を紐解いて行くところば読み応えがあり、明確な国家負担を盛り込んだ吾妻答申案に対して、国の負担を抑制したい旧大蔵省の下書きのもと現在の体制があるということが分かってきて面白いです。また、政権が変わったことで、原賠法十六条を解釈適用して支援して破綻もさせないことを政治的に避け、将来に渡る事業者負担を破綻に代わるある種の「見せしめ」として求める現行スキームは、パトスとルサンチマンの政治が優勢であるこの国には似合っているように思えました。