本書の論旨は次の通り要約できる。
'(1)エネルギーシステムは、生命・安全・持続可能性を中核に再構築されるべき。
'(2)化石燃料や原子力の利用は世代間倫理・公平の原則を損なうので、再生可能エネルギー
を中核においたシステムへ移行すべき。再生可能エネルギーは地域経済・産業界・
雇用に対する効果が大きく、農業・林業との親和性も高い。
'(3)ドイツは再生エネルギーを拡大することで、エネルギー消費削減と経済成長を両立させて
いる。これに倣い日本も固定価格買取制度や発送電分離により再生可能エネルギーを促進
べき。
内外の論文・資料をふんだんに引用し、品位ある文体で日本のエネルギーの将来を論じて
いる。また、11人の共著にも関わらず全体の整合が保たれている。3.11以降の世間の論調に
沿った正統的な入門書として一読する価値がある。
一方、日本がとるべき具体的行動や実現性についての議論が手薄な印象だ。即ち、
'(1)持続可能性や世代間公平を担保するために我々はどれだけどのような犠牲を払うのか。
→消費税を大幅に上げてエネルギー消費体系を変える必要はないのか。
'(2)風力や太陽光の普及のための課題をどう解決するか。
→固定価格買取制度の運用方法、同時同量を維持するための具体的方策は何か。
'(3)ドイツのエネルギー政策に弱点はないのか。
→電力料金は下がっているのか、日本のような独立した系統で成り立つ政策か。
等など。具体的な施策を期待する読者には物足りないかもしれない。