国文法の基礎を知っていて、動詞の活用表がサクッと書けるような人にむけて書かれた文法読本です。
そのため、本書を読む前提として、以下の程度の知識は必要です。
・活用のある品詞は動詞以外になにがあるかわかる。
・各品詞ごとに単語の活用表が書ける。
・動詞の活用の種類を、文語と口語それぞれあげられる。
文法解説そのものも、ふつう学校で習う 「橋本文法 (*1)」 を踏みだした内容となっているため、どの学説が正しいのか戸惑うようなところも。
したがって、高校生や受験生が参考書として使うには、注意が必要です。
(基礎から学びたい人や) 高校生には、むしろ、永山勇 『
国文法の基礎』 がオススメ。
学校で教わる文法をベースにしている点でも、高校生にはそちらの方が安心でしょう。
本書 『国文法ちかみち』 の特長は、より広い視点から国文法をながめ、批判的に解説している点。
日本語というものが先にあり、文法は日本語の構造を説明するため、あとからつけた理屈なので、こまかい部分ではさまざまな例外や学説の相違がでてきます。
本書では文法の解説をしながら、そういった細部にもふれています。
内容は、前半に文法の話、後半は古典解釈という二部構成。
前半は問題を解きながら、師弟の会話形式で解説が進んでいきます。
ときどき脱線する話にはなかなか興味深いものも多いですが、逆にそれを冗長と感じる人もいるかも。
はじめは読者に活用表を書かせながら、動詞、形容詞、形容動詞、助動詞の活用を説明し、つぎに膠着語である日本語の特徴をもとに、接続という考え方から助動詞と助詞のはたらきを学習します。
そのあと品詞分解の話とつづき、文とはなにかの説明があり、文法の話は終了。
ここまでは 170頁ほどの分量ですが、きちんと自分でノートに活用表を書きながら学習を進めないと、話についていくことはできないでしょう。
後半は、古典を解釈するのに必要となる文法知識の解説。
異なる時代におけることばの使いかたの違い、時制,推量,願望などを表現する助動詞のはたらき、文節どうしを組みあわせる助詞のはたらき、敬語のはたらきなどを、こちらは講義形式で説明します。
はじめに 「文法読本」 と書いたとおり、本書は体系的に書かれた文法書ではないため、辞書的な使いかたには適さないでしょう。
しかし本書で解説している内容には、国語に興味のある人にとっては参考になることが山ほどふくまれているはずです。
著者の語り口にも独特な魅力がありますが――こちらは、人によって好き嫌いがあるかも。
注) *1. 国語学者、橋本進吉の文節を重視した文法理論。学校で教える文法の基礎となっている。