佐藤氏の書いた本はほとんど全部読んできたつもりですが、彼の思想が端的によくまとめられているという点で、恐らくこの本は彼の著作の中でもベストではないでしょうか。力強い本です。しかも難しいテーマをわかりやすく書いてくれている、極めて啓蒙的な本といえます。読者はまず、マルクス、宇野弘蔵などを通して、現代の資本主義国家としての日本という国の仕組みや問題点を学び、次いでアーネスト・ゲルナー等を参考にナショナリズムとは何かについて学ぶのですが、その後に出てくる「聖書」だとか「否定神学」、「神学者カール・バルト」というようなものが、なぜ「国家論」と関係があるのだろうかと、とまどうに違いありません。だが意外や意外、最後まで読んでいくと佐藤氏の魔術にかかって、なっとく!なっとく! となってしまうのです。
佐藤氏は「国家は必要です。しかし、国家はその本質において悪です」と端的に述べています。国民が、なぜあれよあれよいう間に小泉純一郎に同調したのか、この本を読むとよく分かります。
佐藤氏は「私は右翼です」と公言していますが、惑わされてはいけません。国への愛を語っているだけで、いわゆる「右翼」とは全く違います。ちなみに彼は強い護憲派です。また、佐藤氏は自称「クリスチャン」ですが、この本を読むと、彼が既成のキリスト教会など支持していないことがよく分かります。ブッシュやアメリカのキリスト教右派などは、キリスト教とも言えないものとして、バッサリと切って捨てています。
私は赤線を引きながら時間をかけてゆっくりこの本を読みました。千円ちょっとでこんなに充実したすごい読書体験ができるとは!ここ一年間の私の読書体験の中でもベスト3の一つに入ることは間違いありません。