本書は、著者の目が捉えた事件の内幕を赤裸々に綴った手記である。逮捕前夜に渦巻いていた外務省内部の権力闘争や自民党の内部抗争、さらには本件を「国策捜査」であると明言したという検事とのやり取りを、冷静に再現していく。また、政治家・鈴木宗男を著者は極めて高く評価している。バッシングにさらされた“腹黒い政治家”というイメージとは対極にあるような意外な人物像が浮かび上がってくる。
(日経ビジネス 2005/05/16 Copyright2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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5つ星のうち 5.0
読んでおくべき一冊,
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レビュー対象商品: 国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて (単行本)
私はほんものの外交、政治といったことからは遠い野次馬的一読者にすぎないが、本書で一躍流行語になった感のある「国策捜査」がいわば「考えない世論」の時代的要請に応える政治権力の発動とするならば、本書は相反して「考える世論」を構成する主体的判断者にむけた、著者の渾身のメッセージ、ということになろう。 通読した心証では、著者は全身全霊を傾けて日ロ外交交渉舞台裏の職務にあたり、本書の記述にも大きな嘘は無いように思われる(当然、私ごときに検証する術はないものの)。が、いずれにせよそれには主観的判断として、という但し書きがついてしまうのである。ことは時として当事者近隣者の主観からまったく離れたところで人を刺す。著者は鈴木宗男氏を「嫉妬に鈍感」と評している。じつは有能な著者自身も全く同じ陥穽におちた、ということではなかろうか。 この重すぎる問題についての感想はなんとも言いようがないが、一つ希望を持たせられるのは、厳しい取り調べ対立の中で成立した、担当検事との非常に深いところでの交流である。同時に、ロシア、イスラエル関連で披瀝される沢山の挿話も、これとは別に注目熟読に値する。 中央官庁関係でなくても、なんらかの意味で組織、政治、外交、情報に類することを扱わざるを得ない多くのひとたちが、一度は眼を通しておくべき著作と思う。
110 人中、99人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
知性ある真の愛国者・佐藤優氏,
By 韓国の龍 (横浜市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫) (文庫)
佐藤優氏は外務省のノンキャリアでロシア大使館での仕事に従事した後、日本に戻って特殊情報(いわゆるインテリジェンス)担当となる。外交というものはあくまで国益を追求すべきものだから、必ずしも正々堂々がいい訳ではない。北方領土も、現状を踏まえて且つ相手国たるロシアが本質的に求めるものは何か、を追求しつつ、政治と経済と組み合わせて交渉するのが正しい。 佐藤氏はインテリジェンスの内でも、それまでの経験を活かしたロシア、東欧の仕事が主となる。そしてロシアといえば北海道出身の議員、鈴木宗男氏。「ムネオ・ハウス」なんかで有名になった人。結局佐藤優氏は盟友ともいえる鈴木議員に連座する形で起訴された。 僕はこの本を読むまで鈴木宗男氏は利権をむさぼる汚い奴と思っていた。そして連座した佐藤優氏も典型的な世の中の常識からずれた外務官僚と思っていたが、この本を読んで、それが誰か及びマスコミによって作り上げられた歪んだイメージで、真実はこの本に書かれていることの方が近いと感じた。鈴木氏は利権をむさぼる人ではない。また佐藤氏担当検事の西村氏も指摘していたように、鈴木氏はその政治力、押しの強さ、理念を実現できる強さから多欲な他人、たとえば田中真紀子から嫉妬を受け、しかも鈴木氏自身の欲が少ない為、そのような嫉妬自体に気がつかない。従ってその地位から引きずり下ろされたという。 鈴木氏は立派な政治家だ。そして鈴木氏とタッグを組んで日本の国益の為に頑張った佐藤氏も立派だ。二人とも真の日本男児といえる。 一方の魑魅魍魎、事なかれ主義、必要な時には鈴木氏に土下座してまで従う姿勢をとりながら、いざ鈴木氏が訴追されると、「鈴木氏の強いプレッシャーによってあんなこと、こんなことをさせられた」と掌を返したようなことをする外務官僚たちとは対照的だ。 僕が興味深かったのは検察官同士のこの会話だ。「この国=日本の識字率は5%以下だからね。新聞に一片の真実が出ているもそれを読むのは5%。残り95%の世論はワイドショーと週刊誌によって形成されるのだ」。 鈴木氏と佐藤氏とが国策捜査の対象になったのは、「時代のけじめ」のためだと(検察官が)いうが、それを望んだのは僕ら一般国民の空気だ。マスコミのもたらす表面づらをなぞった情報でもって二人を断罪しようとしたから特捜が動いたのだ。 その意味ではワイドショーと週刊誌によって物事を判断する低俗な僕らが彼らを獄に追いやったともいえる。 僕らは猛烈に反省しなければなるまい。
27 人中、25人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
国益とは,
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レビュー対象商品: 国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて (単行本)
外務省のラスプーチンと呼ばれ,その実力もさることながら,鈴木宗男氏(足寄)と組んで恐れられていたとされる人物が,「国策捜査」の罠に絡め取られていくまでの記録.著者の論理的な思考と解析力の高さにより,極めて明快にその過程が描かれている.「足寄」と繋がりが深く,そのために小泉氏の進める政策,そして国民の志向に反したため,「時代のけじめ」としてスケープゴートに仕立てられていく.特に,検事との駆け引きが印象深い.国策捜査であり,現在の法律に立脚して罪を作り上げねばならない役割なのだが,被疑者を理解するところから始まった検事にとって,著者とのやり取りの行間にその苦悩が垣間見られる. その殉教者的な自己犠牲は,少々自己を美化して陶酔に入っているのかもしれないにしても,神学を究めようとした者の生き様なのだろうか.同僚のキャリア外交官である前島氏のようになるのは,我々の多くであろう.著者の精神力の高さは稀有のものであろうが,それが疎まれる遠因になったのではないかとも推察される. 停滞を余儀なくされている「サハリン2」も,彼が活躍していたら,あのような展開を迎えなかったであろうと考えると,国益とは何であるのかという課題を残す.
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