本書は1930年代のパリに生まれ、77年に自動車事故で亡くなった人類学研究者が、パラグアイの狩猟遊動民グアヤキとの接触経験をもとに書いた62年以降の論文をまとめて、74年に刊行した本の邦訳である。本書の内容は以下の通りである。第一に、私たちは国家を持たない南米先住民の多くが後進的であり人口も少ないと思いがちであるが、それは私たちの社会を基準に概念をつくり南米にその欠如を見るためであり、自民族中心主義的な発想である。第二に、南米先住民の首長制は非強制的な政治権力、調整役である。一般に首長職は世襲されるが、彼には多くの妻を持つ特権はあるものの、気前良さと弁舌の才が義務付けられ、しかもこうした女性、財、言葉の流れは一方的であるために、権力は外部化され無力化されている。第三に、南米森林地域の社会的単位は双系的外婚的ディーム(72〜73頁)であり、各共同体は外部に対して開かれているため政治的連帯も可能であるが、求心的傾向は遠心的傾向により絶えず無化される。第四に、グアヤキの男は食物禁忌のために、一生他人のために狩りを行い、自分の食糧を他人から受け取ることによって、成員間の平等と社会的絆を確認する。また男が嫌々受け入れた一妻多夫婚も類似の機能を果たす。第五に、先住民の神話は恐ろしい存在を嘲笑によって無害化する。また、人間は不完全で邪悪な大地に住んでおり、その諸悪の根源はものごとが総体において一であるという事実にあると予言者(彼ら自身権力者である)は言う。第六に、加入儀礼は拷問による身体への刻印によって、部族の記憶やそれへの帰属を成員皆が平等に体に刻みこむ儀式である。第七に、南米先住民は必要以上の生産物を確保しているため、それ以上働こうとはしない。南米先住民は無用な過剰を拒否しており、それゆえにこそ国家を必要としない。