外科医長の職を辞して、医者としての原点にたちかえるため
NGO「国境なき医師団」に志願し、ミッションに参加した医師の回想的エッセイ。
著者が初めに赴任したのは、アフリカのリベリア共和国。
政情的にも不安定で、医療体制は崩壊状態の現地におもむいた著者は
日本では考えられない手術の数の多さ、難しさ、医療機器の不足に悩みながら
ミッションにあたっていきます。
現地の方々はもちろん、病院のスタッフも各国からの志願者で構成され
会話や、薬などの専門用語の扱いの違いにも悩まされます。
特に著者にとって印象深かった症例も数件、あげられており
患者だった人々の人生も垣間見られます。
現地の劣悪な医療状況、政情の不安定さがもたらす事故や争いごとの怪我の多さ、
交通網や情報の未熟さゆえに、医療がうけられない人々の多さ。
わかっているつもりでも、ひとつひとつの症例を見ると
ただ生まれた国が違うというだけの格差に、怖くなります。
けれど医療という、人間が発展させた技術に対する彼らの敬意には
医療行為を受けられることのありがたみと、
医療行為は万能ではないが、それが当然なのだという現実を再確認させられました。
読みやすい文章で、心に残るエピソードいっぱいの本でした。