本書は2006年度日経・経済図書文化賞を受賞しており、週刊東洋経済2006年9月9日号や日本経済新聞2006年11月3日に正鵠を射た書評が掲載されています。従って、小生のような一介の在野読者がレビューを記すのは正に汗顔の至りなのですが、西洋史、経済史、財政、金融のいずれかに興味がある一般読書子にも、是非手に取っていただきたいと思い、本稿を起しました。
はしがき、目次、目次の小見出しを眺めているだけで、400年近くにわたる本書の対象視野の広さに圧倒されます。
・国債は、王家の相対借入に代わるものとして17世紀後半に登場したこと、
・登場当時、国王の個人的な信用力(大権を行使して踏み倒すリスクあり)に比べて、永続性のある議会による返済コミットメントのほうが貸し手の信頼を得、歓迎されたこと、
・草創期の国債は、発行の度に元利払の原資となる新税が設けられていたこと、
・仏ブルボン朝の王は代々「借金王」であり、代替わりする毎に選択的デフォルト(貸し手を選別して借金を踏み倒すこと)を行なっていたこと...等々
第1部だけでも、新しい知見や、今日の我が国の財政に対する示唆を得ることで一杯です。
第2部以降をきちんと読み進めるには、債券取引や信用リスクに関する基礎知識が必要になりますが、西洋史・経済史の大綱を把握しておれば、流れを捉えることは可能だと思います。
本書では、明治維新期のファイナンスや、昭和前期のいわゆる高橋財政、そして我が国をはじめ当時の列国が「閉鎖経済に国債を詰め込む」時代(第二次大戦期)にも言及されており、とかく政治史ばかり注目されがちな我が国の近代史を、財政の角度から捉える視点を提供している点も、本書の秀逸なところだと思います。
私は通勤時間を利用して、ちょうど3週間で読了しました。少し重量級ですが、トライすることをお勧めします。専門書ですが、文章は平明で、解りやすいと思います。