鳥瞰図絵師の吉田初三郎の残した日本の鉄道各線の沿線案内を紹介した本です。彼の手にならない案内図は平板な表現ですから、一緒に所収してあってもその違いはすぐに分かります。
昔の鉄道を知るよすがにはなるでしょうが、ずっと鉄道沿線の鳥瞰図ばかりですから、マニア的な面白さは別として、一般の人はこれをどう感じるでしょうか。パノラマ地図仕様の沿線地図が大正から昭和初期にかけて競ったように発行したのは良く分かりました。横長刷りのリーフレットですが、一つ一つを丹念に見てみるととても良く書けており、吉田初三郎の仕事の冴えとその現代的な価値を改めて評価しています。
関東が15、東海が4、関西が10の路線を取り上げています。住んでいるエリアの鉄道からはいろいろなことを教えられました。身近な鉄道でも結構廃線になっているケースがあって、逆にこの路線にも鉄道がひかれていたのだ、ということを教えられました。
鉄道沿線地図ですが、本書の出版で、吉田初三郎の生み出した独特の鳥瞰図の世界に関心を持つ読者も出ることを思うと、本書の価値は図り知れません。全作品を貫いている普通の地図の感覚とは全く違う「大胆なデフォルメ」は芸術作品としての魅力も併せ持っています。本書で掲載されている鳥瞰図もかなりの数に上りました。
なお、解説は沿線ごとに細かく記されています。当時の乗車区間の運賃表や懐かしい写真も少し収められていますから、鉄道愛好家には好まれるでしょう。鳥瞰図以外の情報も得られるようになっていました。
110ページに南海電車パンフレット「大浜汐湯と堺水族館」も収められています。ここは今でいうテーマパークのような役割を果たし、日本の海水浴場としての草分けの場所です。本書をいろいろな方面から興味を持って眺めていました。