英国貴族のカントリーハウスの写真に著者の解説が加えられた本。有名邸宅内部の貴重で綺麗な写真が大きく載っていて、その点は素晴らしい。だが、文章は期待していたものと方向が違った。
"なか見検索"で「はじめに」を読むと、英国貴族の英国社会における位置と機能、他国の貴族との違い、現実の生活の今昔を記したとあり、それらのテーマについて薄い本ながらもコンパクトに知ることができるように思われた。目次を見ても、例えば「タウンハウス」「クラブ」「貴族とジェントルマン」などの小見出しがあって、19世紀の貴族の暮らしやジェントリーについての解説があると期待したし、「王朝の変遷と貴族の興亡」の章では、中世と近世の貴族の違いなどが知れるかと期待した。本文の初めの部分(なか見検索で読める)も、期待に沿うように思えた。
ところが実際に全体を読むと、著者が接した邸宅持ち主の逸話や邸宅にある絵画の細かい話までが披露される一方で、基本解説的な事柄は、体系立たずに軽く終わっている部分が多かった。「王朝の変遷と貴族の興亡」の章は歴史教科書のような王朝の変遷の話でほぼ終わっていた。
「はじめに」をもっとよく読めば、著者はこれまで館の建物と内装についての本を書き、今回のテーマは「私の知りうる範囲で」記したとあった。要は"図説"の"説"への期待が大きすぎたのだろう。いくつかの邸宅の写真にエッセイが付いた手頃な本程度に思っていれば期待以上のものが得られるだろう。