「百鬼夜行」の名が付いた画集、絵巻を見ると、鳥や獣といった生き物ばかりではなく、履物や楽器などの器物も化けてぞろぞろと行列している。この本では「百鬼夜行絵巻」と呼ばれる作品のいくつかをカラーで楽しませるだけでなく、「なぜ器物が化けると考えられたのか」も説明してくれる。「百鬼夜行絵巻」の原型かとも考えられる作品「付喪神記」の紹介は詞書の現代語訳つきなので、器物の化け物である付喪神に現れている日本人の考え、「器物も生き物と同じ」「器物も生き物も大事にしないと化ける、祟る」説の由来がよくわかる。
ちょっと文章の比率が多く、そのどれもが論文調なので、絵を楽しむ、というより作品背景の研究本と言った感は否めない。最初の文章のサブタイトルが「問題点」「私の見解のあらまし」「私の見解への批判とそれに対する回答」というのにも、それがあらわれているのではないだろうか。書かれた時代の違うと思われる「百鬼夜行絵巻」3種がそれぞれほぼ全頁載っており、並び順の比較などが書かれているのもやはり研究的性格の強い編集であることの表れと感じられる。
この中に、伊藤若冲の「付喪神」(福岡市博物館蔵)の画がモノクロで載っている。はじめてみたが、現代的なデフォルメにみえ、さすが若冲、と思える現代アートの香りさえする一枚であった。この画を知ったことが、私的にはこの本の最大の収穫である。