以前、旧満州地域の或る大都市の市長が来日した際、その市長が、彼が市長を勤めるその都市は、日本の統治を経験して居るので、対日感情が良いと、(ついうっかり)発言したと言ふ話を聞いた事が有る。面白い話である。この市長は、正直な人だったのだろう。公式には、日本の満州統治を正当化する事など絶対に無い中国の要人が、うっかり、本当の事を口にしてしまったと言ふ処ではないだろうか。この本を読んで、私は、その市長の言葉は、真実に違い無いと確信した。
この本は、1960年生まれの建築学者である西澤泰彦氏が、戦前、日本の満州開発を担った国策会社、満鉄を、主に技術史の視点から分析、叙述した本である。−−満州の現代史に関する、イデオロギー抜きの視点で書かれた、極めて興味深い本である。
戦前、日本が満州で行なった事には、良い事も悪い事も有った。だが、あえて天秤に掛けるなら、良い事の方が、はるかに多かった事を、この本は、静かに物語って居る。
(西岡昌紀・内科医/戦後61年目の夏に)