1990年9月に初版が発行され、2011年2月28日に新装版初版として発行されたものです。90年の初版が手元にありませんので比較ができませんが、「新装版」ということですから内容は一緒だと思っています。
世界に誇る日本の絵画文化遺産とも言える浮世絵の全貌を、各絵師の代表的な作品を通して俯瞰してみることができるような編集になっており、体系的に浮世絵を学ぶことができます。特定の絵師の浮世絵の作品が好きな方は他の書籍にあたったほうが良いでしょう。
時代的には菱川師宣、鳥居清信から始まり、鈴木春信、奥村政信、喜多川歌麿、東洲斎写楽、歌川豊国、葛飾北斎、歌川国芳、歌川広重、河鍋暁斎、月岡芳年、明治の小林清親までの62人の絵師を扱っていますので、初学者も愛好家もいずれも満足する内容だと思いました。それぞれの絵師の特徴、代表作を見比べながら、浮世絵と一口に言っても様々なジャンルがあり個性豊かな作品が世に出ているのを知ることになります。
浮世絵が好きで、様々な絵師の残した作品を美術館で鑑賞していますが、それだけでは知識の体系化が難しいので本書のような浮世絵の通史を解説した書籍で勉強してきました。そのような使い方としては実にコンパクトによくまとまっており、ほとんどの絵師はカバーしています。このように比較的廉価でハンディでありながら、体系的に浮世絵を学ぶことができる類書ですので、刊行から20年以上たっても新装版として発売されるのでしょう。浮世絵の参考書としては有用だと思っています。
本書を通読した後は、絵師の残した素晴らしい浮世絵と実際に美術館等で対峙することをお勧めします。光による経年変化はあるにせよ、掲載写真とは色合いや雰囲気が微妙に違うことがあります。実物は絵師や摺師の思いが感じられると思いますので。