浦沢直樹「Masterキートン」の初期に、四大文明などという表現はもはや完全に時代遅れであり、古代文明は世界各地にあった、という話が出てくる。メソアメリカでも紀元前1500年にはかなり高度な文明が成立しているから、黄河文明と同じくらい古い。それでも文明としての知名度は低い。名古屋でオルメカ文明の展覧会があったときも、知人の反応は「何それ?有名?空いてたでしょ?」であった。マヤとかアステカとかの、もっと古い文明、というと「ああ、インカとかの、そういったやつ?」。私にしても偉そうなことは言えない。芝崎みゆき氏の著作がなかったら、私とて同じであった。謎の文明。心臓をえぐり出す儀式。
芝崎氏の本を読んだあと、現地写真が豊富に載っている本はないか、と捜したのであるが、意外になかった。この地域は政情不安であることに加えて、遺跡が熱帯雨林に散在する。調査は遅々として進まず、それでも現在も、新しい知見が次々と明らかにされているのだそうだ。本書は手頃な写真集として貴重であるが、1999年の発行はすでに相当古い。類書の少なさが、日本人の関心の低さを表しているようだ。
編集には問題があり、基礎知識なしでは前から読んでもよくわからないと思われる。最小限の用語や暦については冒頭で説明が必要と思う、たとえば、王の名前が「18ウサギ」だなどと、誰にも想像できないはずである。しかしこれについての説明は最後までなかったし、その他の用語についても、いきなり本文中に出てきて、解説がないことが多かった。素人読者の知識水準に、著者は十分に配慮していないのではないか、と疑わざるを得なかった。また、都市紹介が一見ランダムにみえる(実際には地域別)。都市の位置を、いちいち冒頭に戻って確かめなくてはならない。各ページに、小さい地図で示してくれたら便利だったと思う。いくら「図説」でも、写真を並べるだけでは本として成立しない。