本書は歴史人口学さらには少子化問題のとても分かりやすい入門書だ。まず前半では、増加と停滞を繰り返してきた日本の人口推移を振り返り、どのような要因によって人口が増減するのかを素人にもわかりやすく解説しながら、日本の歴史を通して、縄文文化、水稲耕作化、経済社会化、工業化の4つの人口増加の波動があったことを明らかにする。そして後半では、明治以降の工業化がどのように影響して人口を増加させてきたのか、またどんな要因が働いて、現在問題になっている少子化・人口減少の局面が現れたのかについて説明した後、最後に日本および世界の今後の人口推移を予想する。
特に納得したのは、先進国でも国によって少子化の傾向が違う点についての説明だ。工業化にともない農村を離れた人々が都市に集まり核家族を作った際、前近代に大家族(日本の直系親子が同居するイエ制度や南欧・東欧の兄弟夫婦も同居する合同家族など)が一般的だった社会では、男女間の役割分担が旧態依然のままでかつ、同居家族からの子育て支援が得られなくなったため、女性労働力率が高くなると出生率が下がっていった。対して古くから核家族が多かった北海沿岸地域では、コミュニティや国からの核家族への育児支援が早くから機能し、現在では女性労働力率が高くなるほど出生率が上がる傾向にあるという。そこから、日本がとるべき少子化問題への対策が、ジェンダー間の役割分担意識を変えていく努力と、子育てを支援する社会制度の整備にあるということがよく理解できた。