服飾史というのは面白いジャンルですね。本書所収の肖像画を見ていますと、ヨーロッパの権力者・治世者が数多く登場しますので、政治史の色彩を帯びますし、当時の世相を反映しますから、社会史的な側面もあり、美術史や文化史としても捉えられるわけで、多岐にわたるアプローチが可能な学問分野だと思いました。
目に見える形での資料が必要ですので、本書でも多くの図版が使用されています。カラーとモノクロのページが半々ですので、そのあたりは少し物足りませんが、十分に視覚に訴えるものがありました。24ページに掲載してある「フリゲート艦ユノ号という新しい髪型」の図版は興味を惹きました。本当にこれは面白いですね。
38ページには、1802年に描かれたプリュードンの『家族の肖像』が掲載してありました。ここでは近代らしい服装の原型が描かれており、今の時代に少しずつ近づいているのが分かります。
筆者の徳井淑子氏は、お茶ノ水女子大学人間文化創成科学研究科教授で、フランス服飾・文化史を専門とする研究者です。
本書の主な内容です。
第1章 身体の誇張(九‐一三世紀 ゲルマン服飾の伝統、一四‐一六世紀 身体造形の構築、一七世紀 繊細な身体感覚、一八世紀 遊戯的モードの誕生、一九世紀 多彩な女性モード)
第2章 色彩感情と文様の意想(黒服とメランコリー、資本主義社会の黒服、多色嫌悪と縞柄、政治と祝祭の色、紋章とドゥヴィーズ)
第3章 異国趣味とレトロ趣味(東洋趣味、国かぶれ、古代ギリシア調の復古、中世趣味)
第4章 ジェンダー、下着、子ども服(ズボンの表象、異性装、下着、コルセット、子ども服)