日露戦争に関する本は既に多く出ているが、本書はムック本サイズの大きさに豊富な資料を盛り込んでいることが特徴である。しかも、全編カラー印刷。各種兵 器、部隊組織、作戦の情報。貴重な写真や図や地図によって、日露戦争の実態を肌で感じられる。軍服の色や階級章、馬具の詳細説明まで揃っている。ちょっと 高いが、それに見合うだけの内容である。
軍事的な視点からの考察が行き届いており、なかなか読みごたえがある。改めて、日露両軍ともに多くの誤算や、思わぬチャンスや、判断ミスや、運/ 不運に直面した戦いであったことがわかる。また、無線通信の利用や、機関銃の威力、80kmに及ぶ長い距離の塹壕での対峙、大きな損害率、という点で、そ れまでの戦争と第一次世界大戦の間の時期に行われた戦争であることを改めて肌で感じた。
今さらではあるが、量的に劣勢だった日本側は全般的に良く戦ったといえよう。苦戦を重ねながらも何とか敵の主要拠点を制圧した陸軍だが、さらに第 二戦線を構築してロシア軍を深追いすることについては慎重な姿勢をとったことは確かに仕方のない判断だったと思われる。一方、海軍については、結果的には バルチック艦隊を迎え撃つ前に旅順港とウラジオストックの敵を個別撃破して艦隊の補修も完了した万全の状態で決戦に臨めた上に、最初から完勝を狙った戦い 方をしており、戦争だから全てが計算通りではなかったものの、なかなか野心的な作戦計画に基づいて実施されたことがあらためて実感できた。