本書は空海招来の両部曼荼羅に関する懇切な解説を軸としつつ、曼荼羅成立の背景をインドから説き起し、アジア各地の曼荼羅を紹介したり曼荼羅瞑想法について言及するなど、一冊で曼荼羅に関する総合的知識を得させようとしている。
図版がオールカラーでありしかも極めて豊富に挙げられていること、難読語にすべてルビが振ってあること、解説が平明かつ丁寧であることなど、著者の苦心は並大抵のものではなかったであろうが、何れも本書を分かりやすくすることに大いに寄与してい、結果として現在望みうるマンダラ本の中では最良の概説本の一つとなっている。真言宗の伝統に根差しつつも、仏教学諸分野の最新の知見も随所に盛り込んであり、その解説は信頼できる。チベット密教の砂マンダラ作成法を写真入りで懇切に説明しているのも、珍しいことであり、特筆に価しよう。
値段はやや高価ではあるが、日本の曼荼羅のみならずマンダラ全体について総合的に知りたいと思われる方は、まず本書を取られるのがよいであろう。値段以上の価値がある。