2011年3月11日の東日本大震災は、物理的・精神的な衝撃と被害を我々にもたらした。「未曾有」「想定外」といった言葉が飛び交うこの震災後の社会は、日頃のリスクマネジメントの不十分さを物語っているともいえよう。
では、来るべき「リスク」に備えるにはどのようにすればよいのか。
本書は、著者の約10年にわたる多摩大学大学院における「統合リスクマネジメント論」の講義内容に基づき、さらに分り易い解説を加えた”リスクマネジメントの教科書”である。一般ビジネスパーソン・学生諸氏に今回の大災害の与える教訓とか示唆も念頭において再構成し、これまでともすれば我国では希薄といわれていたリスクマネジメント意識に、必要な知識、感性のポイントを、図解を加えながら、できるだけわかりやすい形で具体的に説明する。99ページ全カラー刷りの一冊。
大地震、大津波、原発事故の三重苦を日本に与えた東日本大震災は発生から丁度3ヶ月たった時点(6月11日)でもまだ終息するどころか、その影響は波紋のように広がりつつあります。被災者の安全な避難も目途がたたない中で原子力発電所からの放射能汚染はあきらかに空中に、地上に、海に拡散を続けています。この戦慄すべき、絶望的な状況の中から私たちは何かして活路を切り拓いて日本の再生を実現し、私たちの子孫に、また世界中の人たちに新しい希望を与える努力を続けて行く責任があります。それは長い時間を必要とする困難に満ちたものでしょうが不退転の精神で何としても果さなければならないのです。ボクシングにたとえれば強烈な三連発のボディブローをいきなりくらったような状況ですから、私たちはまだこの衝撃がいかにこれから影響してくるか、またどの程度長く続くか予想もできません。
ただ私たちは再び震災前の状態に戻ると決めてかかるよりは、この災害の結果まったく新しい別の世界が展開される。それは不確実性に満ちた世界で、昨日までの日常は失われるが、新しい、より未来志向の強い価値観に基づいた希望のもてる社会を構築するのだという不退転の決意を必要とするものでしょう。足元ではまだ余震が繰返し起る状態の中で人々の心も揺れています。さまざまの新しいリスクが発生し、それらが常態化する中で個人・家計の人生設計も企業の経営計画も策定しなければならない、いわゆるニューノーマル(新しい普通)の時代がすでに始まっているのだとすれば、私たちは今こそその原点にある「不確実性とリスク」に正面から向き合い、理解することが必要となります。そうしないといたずらにリスクを避けようとする「リスク回避型」の消極的なライフスタイル、企業風土に支配されてしまうのです。
私たちは被災地の復興に情熱を傾けていますが、同時に、冷静な目で事態を直視し、判断し、最も効率的に対応する知恵も持たねばなりません。今こそ必要とされるのは、20世紀初頭の偉大なる経済学者アルフレッド・マーシャルの説いた「暖かい心と冷静な頭脳」であり、それに基づいた「実践的なリスクマネジメント」の理解であります。この小著では最も分り易い形でリスクマネジメントの基礎から始めて、政府、企業、家計そして個人の対応方法を具体的に説明するものです。
想定外は免罪符ではない
日本列島は昔から地震、津波、火山爆発などの天災に悩まされてきました。今回の東日本大震災ほどではないにしても過去に何度も大規模な自然災害を体験し、その度毎に得た知見を基にして次の災害の可能性とか規模を想定し、それに見合う対策を立ててきたはずです。それが今回の東日本大震災では多くの面で崩れてしまったのですから「未曾有の」とか「想定外の」という表現が多く使われ、時としては責任回避のための免罪符として利用されて、一般の人たちを洗脳しようとしているのでは、と発言の意図を疑いたくもなります。
ここで少し「冷静な頭脳」を働かせてみると、たとえば
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