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書名を見、パラパラとページをめくった印象は、いわゆるカタログ本である。日本の民族学研究のさきがけ「アチック・ミューゼアム」のコレクションである土人形や玩具、だるまさん、民具類などが、美しい写真と詳細な解説で紹介されている。だが、これらのカタログ部分を拾い読みするだけでは、本書の本当の魅力は伝わらない。
収蔵品の品定めは後回しにして、コラムページに目を向けよう。執筆者たちが訴えているのはただひとつ。「アチック・ミューゼアム」の生みの親、渋沢敬三の人となりである。
渋沢栄一の孫で、日本経済界の大物だった敬三は、大学時代の大正半ば、自宅の物置小屋の屋根裏に小さな展示場を作った。仲間を集めての博物館ごっこは、次第に本格的な民族学研究へと発展し、「アチック・ミューゼアム」は民族学研究の中心的役割を担うようになる。日銀総裁や大蔵大臣を歴任した敬三は、学問の道を忘れず、戦後の財閥解体で資産を失った後も、若い研究者への支援、学界活性化のための尽力を生涯続けた…。さまざまな敬三のエピソードから、後輩である執筆者たちのまっすぐな敬慕が伝わってくる。
敬三の業績を知った上で、コレクションの数々を見ると、また違った輝きが見えてくる。晩年、病床にあった敬三が「今まで(学問に)いくら金を使ったか」と聞かれ、「10億かな」と無頓着に答えたという逸話が、いつまでも心に残る。(長井好弘)
内容(「BOOK」データベースより)
ガレージの屋根裏から生まれた大コレクション。日銀総裁・蔵相を歴任した渋沢敬三が青年時代につくった小さな博物館は、民俗学・民族学資料の収集へと発展した。大正昭和の生活をうかがう貴重なコレクション。