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回送電車 (中公文庫)
 
 

回送電車 (中公文庫) [文庫]

堀江 敏幸
5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社 / 著者からの内容紹介

評論とエッセイ、小説。その「はざま」にある何かを求め、文学の諸領域を軽やかに横断する――著者の本領が発揮された、軽やかでゆるやかな散文集。

内容(「BOOK」データベースより)

評論や小説やエッセイ等の諸領域を横断する散文の呼吸。それぞれに定められた役割のあいだを縫って、なんとなく余裕のありそうなそぶりを見せるこの間の抜けたダンディズムこそ“居候”の本質であり、回送電車の特質なのだ―枠組みを越え、融通無碍に文章を綴る著者の、軽やかで、ゆるやかな散文集。

登録情報

  • 文庫: 285ページ
  • 出版社: 中央公論新社 (2008/06)
  • ISBN-10: 412204989X
  • ISBN-13: 978-4122049895
  • 発売日: 2008/06
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.6 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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15 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
この56編からなる散文集を読み終えた時、「回送電車」というタイトルでこの一冊をまとめ上げてしまう作者の感覚の鋭さを、改めて噛みしめることになるだろう。

回送電車は何の前ぶれもなく目の前に表れる。コントロールを誤ったボールから、古本のすき間から、ふとした読み間違いから…。その瞬間、驚くべきスピードで忘れていた記憶が鮮やかによみがえり、全く違う場所へ連れ去られるような経験は、誰でも身に覚えがあるのではないだろうか?

この散文集では作者の少年時代から現在、または故郷の岐阜からフランスまで、場所や時間だけでなく、ありとあらゆる枠組みを越えて、想いが駆け抜けてゆくさまが綴られている。数々の一瞬はつながり、どこか無限なものへとたどり着けるような昂揚感を読む者に与える。ひそやかながらも、幾すじもの残像をまぶたの裏に焼き付けていくような、まさに「回送電車」の名にふさわしい作品である。

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8 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ochi19
形式:単行本
芥川賞受賞作「熊の敷石」で堀江氏の作品に初めて出会った後、氏の作品を追っかけています。氏の作品の特徴である小説ともエッセイともとれる作風がなんとも心地よく、読んでいる間、背筋がスッと伸びるように感じます。作品によって小説の方へ傾いたり、エッセイに傾いたり微妙に振れる感じが面白い。文学・芸術・パリの事・音楽から身辺雑記などをテーマに、適度にに抑えられたユーモアを織りこみながら強靭な知性に裏打ちされた折目正しい文章によってつづられています。更にテーマ自体も現在は文学史の波間に埋没してしまった様な作家やメジャーであっても読んだことのない作家をとりあげる傾向を感じます。氏を芸術全般の水先案内人として、新しい芸術や文学の世界が広がって行く様に感じます。
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1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
本著は巻末の初出一覧をみる限り、古くは1993年12月ユリイカに掲載した「サンタクロースの背中」から2000年までの新聞・雑誌等々に執筆された文章で構成されたものらしい。

回送電車とはおもしろいことを考えたものだなあ、とつくづく感心させられる。このセンシィティヴな感覚こそがこの著者の知性あふれるあの独特の文体を表出する源流であることは云うまでもない。じつは若い頃、ぼくも池袋私鉄沿線に住んでいたときにその不思議な存在を知ることになったのだが、プラットホームの酔っ払いが発する「カタヤー、準急、準急」「コナター、特急、特急」などと大相撲の“立て行司”まがいの奇声に驚きながらもおもしろく眺め入った記憶がよみがえってきたのだった。

おもえば、評論や小説のようでもありエッセイのようでもある。ポエティックな趣を感じさせるかと思えば散文の域にとどまる独特の地平をつらぬく不思議さが絶妙に心地いいのだ。いみじくも著者は冒頭、「まえがき」に相当する「回送電車主義宣言」なる決意表明のような風変わりな文章をそこはかとない憧憬と同胞意識に似た感情を抱く、としてこのように書きしるしている。

特急でも準急でも各駅でもない幻の電車。そんな回送電車の位置取りは、じつは私が漠然と夢見ている文学の理想としての、《居候》的な身分にほど近い。評論や小説やエッセイ等の諸領域を横断する散文の呼吸。複数のジャンルのなかを単独で生き抜くなどという傲慢な態度からははるかに遠く、それぞれに定められた役割のあいだを縫って、なんとなく余裕のありそうなそぶりを見せるこの間の抜けたダンディズムこそ《居候》の本質であり、回送電車の特質なのだ。

なるほど、この主義とも宣言ともいえる文章に接すれば誰でも『郊外へ』『雪沼とその周辺』『熊の敷石』『めぐらし屋』等々にみられる偏執的なこだわりと知性あふれる文体、さらに奇妙な路地に迷いこみ日常と非日常が混在するような独特のながい修飾で描かれた不思議な物語を想起するだろう。

「無用の用」として解説されている杉本秀太郎氏の知性あふれる文章も素晴らしく、さわやかで心地いい読後感に充たされる散文集『回送電車』をどうぞお楽しみください。
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