自由に、読み手の思うがままに捉える事の出来る漫画。答えが完全にない漫画。「回螺」。
1年前に発売された画集に続き、今回は漫画作品が登場だ。公式で出るのは随分久々なのでは・・・。
1年前の画集も素晴らしい出来だったが、今回もやっぱり考えさせられる、深みのある一冊が届いた。 安倍吉俊に外れなし。
最近まで「robot」に連載されていた「廃域」、これまで単行本未収録の読切群「古街」「樹葬」、
そして10年以上前に自費出版で出した「白雨」が収録されている。
結論から言ってしまうと、恐ろしいほどに暗い、虚ろな作品ばかりが収録されている。
で、しかもそれぞれの世界観は同じくしていて、共通項も多い。
だが同じようなテーマ・世界観とはいえそれぞれに違う味わいがあった。それが面白かった。
ただ・・・単純に面白い、というよりは考えさせられる又は少し物悲しい気分になる感じだ。
彼の作品には、シリアスなものでもギャグが入ってたりするが今回は皆無。
設定や専門用語もかなり多いため、読むのには時間が掛かる。 違う言い方をすれば、じっくりと読める。世界観に浸れる。
なんというか、ハッピーエンドでもバッドエンドでもないような気がした。
スタートの時点から最悪の状態である物語たちは、正に無重力地帯というか、どこにも到達してないような印象を受ける。
起承転結の転までをじっくり描いて、結を放棄してるかのような。
「廃域」は彼の漫画では珍しいほどバイオレンスなシーンがある作品であり、話数も多いので
最も衝撃的な作品と行く末が心に残る。個人的には唯一商業作品ではない「白雨」が特に好き。
他の作品群と違ってモノクロ収録なのだが、残酷な世界に於いて精一杯の優しさの描写が非常に胸を打つ。
他の作品は壮絶な展開に唖然とする感じだが、この作品だけは切なさを感じ取った。
兎に角、読み手になんらかの衝撃や印象を与えることは明確である傑作に仕上がった。
ここまで絶望剥き出しの本は安倍吉俊にとって初なのでは?
ますますファンになってしまった。