作者が瀕死の交通事故から復帰してから発表された作品。満を持して、というには話が膨らまない。
自身も認めているようにキングという人は書きながら筋書きを考える。あとがきから読みとれるように本作は基本的にワンアイデアストーリーであって、長編にする必然性はプロットにはない。
ただ、これは作品の欠点にはなりえない。ってのも、それこそが同氏の傑作に共通する特徴で、筋は単純だけどディテールの書き込みによってリアリティと緊張感が連動してたかまっていくというのがキングの持ち味のはず。
本作ははっきり言って冗長。理由は、膨らんだ字数がプロットを盛り上げるために費やされているのではなく、ペンシルヴェニアという独立13州のなかのしかもアーミッシュが住んでいる州西部の土地をモチーフにアメリカ人の郷愁を誘うために費やされているからかと思われる。
味付けは、市民としての誇り、警察官の職業に対する誇り。
我々がキングに期待するのはホラー、またはヒューマニスティックな感動であって、周囲360°地平線が見えて町のほとんどの人が顔見知り、といったアメリカの田舎風物への共感ではない。
じゃあ、アメリカ人には面白いのかってえと…そうでもないみたいで、レビュー読んでも皆同じような感想を述べてる。ReviesOfBooks.comが、味も素っ気もなく「典型的なキングのホラーではなく、彼の代表作でもないだろうが、大方のキング・ファンには楽しめるかもしれない」と苦しくも無難な評を記しているのからも推して知るべし。
叙情に訴える記述に走るあまり、ホラーとしても成長譚としても中途半端になってしまった本作は他の作家ならともかく、キングにあっては失敗作と呼んでよいのでは(あっ、言っちゃった…)。
帯で煽りまくった新潮社はJAROに駆け込まれても抗弁できないと思う。