シャーロック・ホームズと最初に出会ったのは、小学校低学年の頃だと思いますので、もう30年も昔のことになります。その間、読んでいない時期もありましたが、「シャーロック・ホームズ。」と聞けば、少し頭の中が白くなり、胸が高鳴る気がします。シャーロック・ホームズは私にとってそういう存在です。
最高の傑作短編集「シャーロック・ホームズの冒険」に続く第2の短編集「回想のシャーロック・ホームズ」では、ホームズのライバルであり、小説史上、屈指の名悪役といえるジェームズ・モリアーティ教授が登場します。深く落ち窪んだ眼を持つ苦行者風の容貌、猫背で爬虫類を思わせる動作・・・、まさにコナン・ドイルの想像力が生んだ強烈な悪役です。主人公のホームズと同じレベルの名キャラクターですが、この2人の好対照、という点も含めて、Batmanシリーズのジョーカーと同じようなインパクトがあります。100年以上も前に、こうした素晴らしいキャラクターとその対決が描かれていたことに驚きます。
魅力的なキャラクターであるモリアーティ教授ですが、実際に本人が登場する作品は、この短編集の「最後の事件」だけですので、このことのみをもっても外すことができない短編集です。この短編は、空気銃を警戒するホームズの登場から、緊張感みなぎる展開で、読み始めると、読み終えるまでどうしても惹きつけられてしまう磁力を持っています。
そのほか、傑作と言われる「銀星号事件」が収録されています。個人的には、「黄色い顔」の素晴らしいエンディングが子供の頃から大好きです。
作品によっては、最高の傑作短編集である「冒険」に比べると、やや盛り上がりに欠ける作品もあるような気がしまして、このあたりは作者の疲れ(ネタ切れ)を反映してしまっているのかもしれません。しかし、「最後の事件」をはじめとする傑作を読むことができますので、星5つは間違いのないところです。