単なるSFではなくミステリー的であり、冒険であり、10代の子どもたちの心の錯綜とでもいうか、そういうテーマがたくさん盛り込まれた長編。大塚英志の「ストーリーメーカー」的に言えば「行って帰ってくる」物語とは言えない。だからこそ作家の力量が問われる。
小林めぐみは多分、彼女の知識量でもってSFを実証的に語り読者をうならせることができるからこそ、「物語の論理」を外しても読ませることができただろう。それに、この小説は「行って帰ってくる」ことができないことこそが、ストーリーのテーマだ。帰る場所を探し続ける物語。それがすごく悲しく、苦しく、どうしようもなくやるせない、10代の心理ともあいまって訴えかけるものがあった。
深い余韻が残る。