楡野卯月は18歳。武蔵野の大学に進学するために故郷の北海道から上京してきた。独り暮らしを始めた彼女は大学の同級生にこう訊かれて言葉を濁してしまう。「どうしてこの大学に進学しようと思ったの?」。卯月がこの大学を選んだ本当のわけは…。
卯月が上京した初日、まだ引越し荷物も届かぬ殺風景なアパートの部屋で畳の上にひとりごろんと横になるシーンがあります。7年前にこの映画を渋谷で見たとき、この場面で私も、そして私の周囲に座っている何人かの観客もはっと息を呑んだような気がしました。私を含めた人々がこの場面の卯月を見て、「あぁこれは、私だ」と思ったはずです。18の頃、何でも自分で決めてやっていけるという大きな期待と、何でも自分で決めていかなければならないという大きな不安を抱えたあの最初の日のことが、鮮やかに胸に蘇ってくる一瞬です。
この映画は親の庇護のもとを離れた少女が、周囲との距離を測りかねながらも、ゆっくりと自分の足で歩き始めようとする姿を描いた佳品です。
新しい人生のとば口に立ったばかりの彼女はその後の暮らしの中で、きっと大いに笑い、泣き、腹を立てたり喜びを感じたりしていくはずです。
そしてこの映画の公開から7年。あのどうしようもなかった不安というものが懐かしく甘酸っぱいものに感じられる人生を、卯月が歩んでいると信じます。