単行本版のレビューで、さらに文庫版の帯にすら書かれているように、
大枠は「母子家庭に生まれた子が父を恋う」だけの小説である。
ただそれだけの小説に、クロマニョン的なエッセンスが加えられることで
なんと鮮やかな物語になっていることか!
物語自体はシベリアの雪原のように静かで、
普通の少年が友達を作り、なくし、恋をする、そんなおおむね普通の姿を描いたものである。
それにクロマニョンという意味不明な設定を加えることで、なぜか、
誰もが少しは経験するであろう青春時代特有の心のゆらぎが、
恐ろしく繊細な感触で読み手に伝わってくる。
私にとって、その感触こそが青春小説に最も必要なものである。
終盤の性急さも、それまでの数百ページで渉をいう人間の気質をわかった上で読めば
十分に納得のできるものだと思う。
人を選ぶとは思う。ドラマチックな青春を求めている人には合わないかもしれない。
ただ少なくとも私にとっては、穏やかながらも確かな読後感で胸がいっぱいになる
最高の青春小説でした。