本書は、そのタイトルからすぐに分かるように、赤穂浪士の討入事件を題材とした小説です。
赤穂浪士の討入事件は、事件そのものを正面からとりあげた作品(『赤穂浪士』『四十七人の刺客』等)から、別の物語に事件を絡めた作品まで、数多くあります。
本書がその中でも独自性を放つのは、一貫して、赤穂浅野家に奉公する女中であり、義士のひとりの恋人でもある「きよ」という一人の女性を通じて赤穂浪士討入事件を正面から見据えている点にあると思います。
そして物語が義士の切腹で終わらず、その後の赤穂浅野家再興まで続いている点も、ユニーク。
討入を影で支えた女性の物語で終わることなく、討入はもちろん、義士たちが成しえなかった”浅野家再興”を支えた女性の物語となっています。
作者が『あとがき』に記した言葉がとても印象的です。
「遺された女たちは、微力ながらも力を合わせ、辛抱強く、地道な運動をつづけて、ついにこれを叶えた。事を成す、とは、そういうことだ。(以下省略)」
ストーリー展開の意外性、女性作家らしい柔らかな文体、個性的な登場人物と、娯楽性も備えながらもしっかりと芯のある話運び。
『忠臣蔵』の新たな名作誕生、と言っても過言ではないと思います。