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価値観の激変が著しい昨今だが、今もって毎年12月になると赤穂事件関係の話題が世に現れる。だが、それも14日の吉良邸討入りまで。やがて日々の現実の中で忘れられ埋もれてゆく。この作品はまさに、その後の歳月に埋もれた「四十七人目の男」寺坂吉右衛門の、12月15日以後の長い半生を扱った連作である。「忠臣蔵」の呼称を産んだ浄瑠璃狂言「仮名手本忠臣蔵」以来、足軽以下の身分だった寺坂に焦点を当てることで事件の重層的意味、集団劇の奥行きを活写した先行作は少なくないが、本作のように大石内蔵助の器量、深謀を大いに称揚しつつも、決行以後その大石の厳命に従って生き永らえることがいかに悲惨で苛酷であるかを、様々な側面から描き尽くした作品は希有であろう。身分と意地の狭間に揺れる寺坂の煩悶は、赤穂事件に取材した虚構の設定を超えて、今を生き悩む現代の我々の姿に通ずる。名誉ある死は美しく、残余の生は痛ましい。だが、我々はその痛ましさを抱きつつ、孤独と憧憬の隘路を彷徨いながら生きていかなければならない。
12月に限らずいつでも、いつまでも読み継がれるに値する作品だ。こみあげる感情はいったん霜のように凍えさせられるが、読み進むうちにやがて熱い涙によって溶かされるだろう。
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