四万十川の上流の農村に移り住んだデザイナーの著者による、物や道具を通してそれが存在する土地に暮らす人の生活をつづったエッセー。人と物との関係を考えるときに、著者がデザイナーである事はうってつけだ。
ここで紹介される物や道具は特に珍しいものではなく、例えば、普通の軽トラックが運搬の他に、皆で草刈りのあとに汚れた靴や服のまま荷台の上でビールを飲む座敷(汚れは水で流すだけ)になったり、農作物を載せて売る店になったり、小学校から借りてきたオルガンを載せて野良コンサートをやったりといった、ものの使われ方のを通して四万十の農村に住む人々の生活を淡々かつ生き生きと描写する。
スローライフとかロハス、エコと言った言葉が空虚に感じられるのは、その裏には生活の佇まいやその文化が感じられないからだということを、この本は暗示的に示しているように思う。この本は地味だが力強いものだ。