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しかし一転してこの「囚人狂時代」で描かれるのは、これがあの「刑務所の中」と同じ日本の刑務所なのかと思うほど、漆黒の闇が果てしなく広がる恐怖の世界です。
囚人の「腐った根性を叩きなおす」ために何時間も行動訓練と称して行進させ続け、いじめを繰り返す刑務所職員。精神に異常をきたして深夜ずっと奇声を発する受刑者や、痴呆のために排泄物を垂れ流すままの高齢の囚人。
著者は獄中で小説を書き始めますが、その創作活動を快く思わぬ担当官4人によって狭い部屋に3時間も立たされ、四方から罵倒され続けるという懲罰を受けます。また真冬にパンツ一枚で数時間立たされ、手足の霜焼けが裂けて出血してしまうという憂き目にも遭います。
ノートを処分されるなど、その創作活動を妨害されながらも、著者はなんとか執筆した原稿を面会に来てくれる母親の協力を得て獄外へ出し、ついには新日本文学賞を受賞します。
このルポは、まさに貴重な奇書といえます。それでいて全編にシニカルなユーモアがあり、ウィットを忘れないその心が著者をして12年に渡る奇界生活をなんとか乗り切らせたのでしょう。
但し、著者が刑務所に入るそもそもの原因は彼が人を殺したことにあります。人の命を奪った経緯やそのことへの悔悟の念、そして残された遺族への謝罪の気持ちといったものについては一切この本には書かれていないことを付言しておきます。
警務官の横暴などについて書かれた本は 多いものの、本書のように右や左をめぐる 思想が刑務所内でどのように語られ、生活
に影響を与えているかを叙述した本は始めて 読んだ。その他、クスリや精神病に関する記述 も生々しく、興味深い。
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