ラッキーと言えば長年ヴァルデマールシリーズで過酷な状況の克服や自立を描いてきた方で、どちらかというと成熟した女性こそ共感が大きい作品を輩出してきたイメージでした。
しかし、今作は良い意味で「ラッキー流ジュブナイル」を読ませてもらったという気がします。
アン・マキャフリー女史との共著「歌う船」「旅立つ船」2作と似た匂いなのですが、あちらはSFであり共著です。
こちらは完全にラッキーテイストでありながら、小学校高学年〜中学生くらいの女の子にも読んでほしいと思うような物語に仕上がっていました。
有名すぎるほど有名な白鳥の湖をベースにしていますが、そこはさすがラッキーらしく、オデット(白鳥)とオディール(黒鳥)が単純な善悪の対比ではなく、それぞれに事情や感情があります。
主人公はオディールで、その周辺でオデットが絡んできます。最初は互いを、敵の娘/罰されるべき存在として、双方が物理的にも感情的にも距離を置いて接していますが、物語が進むにつれ段々と打ちとけ合っていくあたり、微笑ましく読み進めていけました。
また、王子とその気の置けない友人の関係は、序盤のオデットとオディールとのよい対比になっています。
個人的には、王子が嘘くさい綺麗事で固めたようなステレオタイプの「おとぎ話のプリンス」でないところが一番良かった点でした。
ラッキーとしては軽いテイストの物語ですが、こめられているメッセージそのものは不変だと思います。
オディールの将来が楽しみではあるので、もしシリーズ化されたら続けて買うと思います。