前半は白人の由来と「ギリシャ文明はエジプト文明からの借り物であったが、大航海時代以後、アフリカ、アジア、アメリカの植民地化を正当化するために白人以外の人種は劣っているという思想を作った。そのため近代ヨーロッパ文明の基礎となったギリシャ文明はアーリア人が何者にも頼らずに作り上げたものという風に改ざんされた」と主張するマーティン・バナールの著書「黒いアテナ」とバナールを批判する白人学者の主張の紹介になっています。
正直、これだったら「『黒いアテナ』を巡る論争」とかいうタイトルの方が相応しいように思えますが、それでは売れないでしょうね。
岸田秀の歴史観を一言でいえば「目には目を」です。彼は同じ方法論で日本と中国、韓国の現状についても分析しています。何と中国と北朝鮮はかつての大日本帝国が“目指した”白人勢力からのアジア開放を受け継いでおり、本質的には同じだというのです。さすがにこれには抵抗を感じます。
勿論岸田秀の主張にも一理あることは認めざるを得ませんし、何を指摘しても「無意識ではそうなのだ」と言われるような気がします。しかし、日本がアジア開放を言い出したのは戦争が始まってからであって、当時の日本人も最初からそれを目標にしていたわけではありません。アジア開放はそれを正当化するための後付の理屈の筈です。
岸田秀は経済や思想だけでは歴史は語れないと言っています。もっともです。歴史は縄のように様々な事情が絡み合っているものだと想います。しかし、私には岸田秀は唯幻論だけで歴史を語ろうとしているように思えるのです。