「どんな商品であっても基本的な特徴さえわかれば100%に近い確率で即決で売れる」という魔法のような謳い文句の本です。実際著者は営業のスーパースターか神様のような実績を積んでこられたということですから、それは嘘ではないのでしょう。
実際、飛び込み営業で商談の席につき、商品の必要性を感じさせる前段のトークへの持って生き方など、大変参考になるテクニックがあり、営業マンなら読んでおいて損はないとも思います。
ただ、個々の要素では学ぶ点が複数ありますが、全体としては違和感を感じざるを得ませんでした。確かに全ての商品にはベネフィットがあるので、営業マンはその価値を届ける青い鳥であるし、お客様をリードして決めきれないお客様の背中を押して差し上げることも大切な仕事でしょう。その点については全面的に同意します。
けれど、中盤以降で連呼される「お客を思い通りに操る」「お客の抵抗を抑える」「こう切り返せばあとは言い返してこない」「即決させる」という、相手の人格を無視したような本音(本書では『極意』として紹介される)や、「商品を見ていないのだから納得は必要はない」、「なにがなんでも即決にこだわる」等の考え方までお客様のためと豪語するのは、さすがに詭弁が過ぎるのではないでしょうか。売るため、自分の数字を上げるため、失敗して自分が傷つかないためという「自分のため」が出発点になければ、そのような高圧的な考え方は持てないはずです。少なくとも著者は、「商品にまつわる生活の一部」を向上させることはあっても、お客様の人格を尊重することには全く関心がないようです。
営業というのは精神的に厳しい仕事ですから、著者の言うことは理解できる点が多々あります。しかし、著者の言う「お客様のため」は、どうしても自分を完全無欠の営業マシーンに切り替えるための強烈な自己暗示にしか思えませんでした。勿論、それならそれでいいでしょう。営業というのは売るのが仕事なのですから。けれど、それを「お客様のため」と論じて読者が皆信じると思っているなら、あまりにも読者を馬鹿にしていると思います。他の方のレビューにもありましたが、正直後半は不快感が拭えませんでした。