世のあらゆる「セールス書」は、本書の変奏に過ぎない。以前『販売は断られた時から・・』のタイトルのもと刊行され、ずっとロングセラーだったものの新訳版。
販売・営業とは、商品交換という資本主義の原初形態を媒介する「命がけ」の行為である。それは、マルクス先生が説く通りなのである。製品はそのままでは「商品」に非ず。初めての上司は、これをしきりに口にしていた。売れなければただの製品、ただの物なのである。
よって、ここに貨幣論の端緒が仄見える。
「100円でカルビーのポテトチップスは買えますが、カルビーのポテトチップスで100円は買えません」ということだ。ポテチで100円を「買おう」と思ったら、営業活動が必要なのである。そこには膨大な広告宣伝費も必要となる。そして営業担当者の登場である。営業の精神現象をここまで言葉で語りつくした本はない。ここには、安手のテクニック書や詐欺的なスピリチュアル系の自己慰撫を専らとした「自己啓発」書には及びもつかない人間観察と思索が結晶している。