レストランや美味しい食べ物を紹介するというよりは、食べ物を巡る身の周りの出来事や想い出が書かれたエッセイである。著者もあとがきで触れているのだが、食欲は旺盛で何でも“ガツガツ”食べる。
医者から“いいのは胃腸だけ”と言われた著者は、ある日ジャガイモコロッケが食べたくなる。でも脂肪が良くないと言われているので、コロモのないコロッケを作って食べる。要するに卵やパン粉をつける前のタネである。その姿を想像するとなんともいえないおかしいのだが、著者の数々の病気を思うとチョット哀しい。彼がこだわるのは、ご飯、豆等の日常の食べ物なのだがそれが如何にも彼らしい。著者(色川・阿佐田)の作品の多くを読んできた私もそうでなきゃと思ったりもする。
私はソバの美味しさを記した「ソバはウドン粉に限る」が読みたくて長年この作品を探していた(マーケットプレイスで買おうと思えば買えたのだが…)のだが、期待を裏切らない本当に著者らしい作品であった。そう、ソバはウドン粉に限るのである。
この作品はエッセイであるはずなのだが、「大物喰らい」のように著者(この場合あくまで色川武大であるが)が書く私小説に仕上がっているかのような作品もあり、色川武大の世界がいっぱい詰まったエッセイである。ファンならずとも読んで損はない。