キワモノと思っていましたが、一読、哲学への基本理解と姿勢が正確(まっとう)なことに感動しました。哲学、哲学史の入門書には「哲学」は説明されていても、「何故人は哲学するのか」を十分に記述していない著作が大多数です。結果、読者には少しの哲学用語と何か煙にまかれた印象しか与えられません。この著作は哲学史上の各思想をまっとうに追いかけながらその全ての箇所で「人が哲学するわけ」を繰り返し、力強く説明しています。(これ、大切。芸術や自然科学について、「何故それをするのか」に答えられなくとも致命的じゃないけど、哲学に関してはねぇ。)
このレビューの表題はすでに書かれたいくつかのレビューへの反駁でもあります。
世間と折り合いをつけなきゃならない哲学先生と数年後には哲学が青春のいい思い出になることを予定している、しっかりものの学生さんたち(ミンミンゼミ、油ゼミ族)には、この本は都合が悪いでしょう。本質的な反論のできない彼らにできるのは、鼻で笑って背をむけるか、用語の細部のどこそこが不正確とあげつらうことくらい。そもそもの方向性があさってを向いてますから、そうなります。しかも驚くべきは、その不正確さの指摘も、蝉さん方の稚拙な読解と理解力によるただのカン違いであって、この著作には誤った記述はそうありません。
なぜなら、著者は ”人生の難問について「考えているふり」をすることではなく本当に「自分の頭で」考える行為こそが、哲学なのです。”といい、そのために、”基礎の基礎に立ち返る”ための労作を著しただけにすぎないからです。
独自の切り口で歴史を見ているのでもなければ、新しい思想を開陳しているわけでもない、こんな愚直なまでに基本の説明に終始した著作ですあれば、間違えようが無いでしょう。
加えて、基礎の基礎の基礎であるところの、「人は何故哲学するか」について、善く書かれていることは稀有ともいえ、哲学史の入門書として推薦いたします。