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5つ星のうち 5.0
喧嘩両成敗法の生まれ出た社会的背景,
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レビュー対象商品: 喧嘩両成敗の誕生 (講談社選書メチエ) (単行本(ソフトカバー))
面白い! 著者はまだ若いのに文章がとても上手い。些細な口論が双方死傷者を出す大乱闘にエスカレートする様子がいきいきと描かれていて滑稽ですらある。そういったエピソードの描写に限らず論考の文章も平易で読み易い。一般読者向けの本の執筆は今回が初めてということだが、とても信じ難い。著者によると、喧嘩両成敗法は、室町時代の終わり頃にその萌芽が見られ、戦国時代の分国法として全国的に普及するが、江戸時代には制定法としては消えていくという。著者は、室町時代の京都や奈良に住んでいた公家や僧侶の日記を素材とし、そこに記されている様々な出来事と、それに対する幕府の措置や人々の感想の記述から、喧嘩両成敗法が生まれ出た社会的背景を明らかにしようとする。 著者の強調点は以下の4点。第1に、当時の社会や人々の心性を抜きに、喧嘩両成敗法を語ることはできない、ということ。第2に、喧嘩両成敗法を社会の中で形成された紛争解決の法慣習の蓄積の延長に位置づけるべき、ということ。第3に、喧嘩両成敗法を中世社会全体の紛争解決策の中の1つとして考えるべき、ということ。第4に、喧嘩両成敗法の限界面にも目を向けるべき、という点。 私自身は、公権力の支配が不完全な世界における秩序形成、という観点から本書を読んだ。そういう意味でヤクザ世界での秩序形成との類似性などに興味をもった。
4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
負の連鎖を阻止する大法,
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レビュー対象商品: 喧嘩両成敗の誕生 (講談社選書メチエ) (単行本(ソフトカバー))
「どちらに非があろうと、喧嘩をしたもの同志痛みわけで解決という中世以来の天下の大法」「多少荒っぽい解決法だが、法廷が存在しなかった時代には、やむをえない部分もあったのではないか」 恐らくこれが、多くの人が、喧嘩両成敗に対して抱いているイメージではなかろうか。 本書を通じ、当時の人々の思考や行動形態を見ると、喧嘩両成敗が成立するに至った過程がよくわかる。 すなわち、自力救済に訴えざるをえなっかた中世の人々は、 「損害を受けたら復讐をする」 「自分の属する集団の被害は、自らの痛みと考える」 「自分の被害と相応の被害を相手方に与える」 という思考のもと、やられた分だけやり返すことを正当と考えていた。 そこには、多くの悲劇があり、理不尽な血が流されていたのであろう。 こうした社会の中で、やられた分以上のやり返しを戒め、復讐の連鎖を断つために生まれた紛争解決法が、喧嘩両成敗法だった。 自力救済から裁判へと移っていく過程で生まれた喧嘩両成敗法には、その形成過程で多くの先人達の格闘と矛盾が刻み込まれていることを教えてくれる一冊だ。
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5つ星のうち 4.0
文明とは、野蛮の上に被さった薄膜。,
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レビュー対象商品: 喧嘩両成敗の誕生 (講談社選書メチエ) (単行本(ソフトカバー))
ケインズの有名な言葉に「Civilisation is a thin and precarious crust erected by the personality and the will of a very few, and only maintained by rules and conventions skilfully put across and guilefully preserved.(マイ訳:文明とは薄く繊細な外皮のようなものだ。一部の人間の強力な人間性と意志によって打ち立てられ、規則と慣習の網の目を巧みに張りめぐらすことによってのみ維持される)」というのがあるが(後にもっと続くのだが忘れた)、 読後感がまんまコレだった。尤も室町期は「強者の意志」でもどうにもならない騒擾期だった。一見すると「強権発動」に見える「喧嘩両成敗」だが、これを普及させたのは実は公権力の側ではなく、下級武士や庶民たちからの突き上げだった。復讐心の制限というのはいたく難しい(アルバニアの「血の復讐」の伝統なんて想起してみやう)。喧嘩両成敗という「苦肉の策」にしても、そこから生じる矛盾や理不尽との長い格闘史があり、その時々の大名や幕府もそれを自覚した上で、「喧嘩両成敗」を安易に発動していないのだそう。 という訳で、秩序の確立とはこのように困難で、長い時間を要するのだ、というのがよく分かる一冊。まあ所詮、我々はサルに毛が生えた(というか、サルから毛を取った)動物である。室町人の「衡平感覚」「相殺主義」「集団主義」など、おサルさんにもある本能だ。おサルさんたちが集団として何よりも尊ぶのは「fairness」と「empathy」だとサル学者のフランス・ドゥ・ヴァールの著書で読んだ記憶がある。それを念頭に置くと、室町の皆さんの行動様式に奇異なところはほぼ全くない。サルなのである。そしてアナタもワタシも一皮剥けば室町人だ。 ちなみに著者が展開する「日本人論」は私的には結構どうでもよくて(サル論の方が説得力を感じる)、むしろ冒頭でちらりと言及されていた「十五世紀とは地球規模の環境変動により巨大飢饉が頻発した時代」という記述の方に興味を引かれた。緩やかな秩序回復の背景には気候温暖化とか農業の生産性の向上とかとか、何らかの外部要因の一助があったのだろうか。日本人論よりそっちをやって頂戴、と個人的には最後の数ページが残念だった。 ともあれ、いかに知識や技術が向上しようとも、倫理感覚の面では人間は室町期からほぼ全く変わっていないはずだから(サルだ)、外部環境が激変すれば、このような時代が再び出現する。
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