製作当時の売り文句だったら・・・、名作・『夫婦善哉』のスタッフとキャストが作った文芸映画。
東京・上野にあった団体専門の旅館の番頭の周囲に起こる騒動を、喜劇風に描いている。
主人公の過去や個人芸など面白い見所が多いが、要はラストシーン。
「カッパ」と呼ばれるガイドまがいのチンピラ集団との対決があるが、雇っていた旅館は商売のためなら「黒い癒着」も辞さぬ態度で芝居で辞表を出した主人公を解雇する。カッパ達も、所詮は周囲に踊らされているにすぎない。最後の親分の行動も、少し味のある部分を残す。
後に連作されるシリーズ作を意識して観ると、意外な暗さにショックをうけるかもしれない。しかし、こうした「下町を舞台にした人情喜劇」というバックボーンが大衆にうけ『駅前』シリーズとして人気長寿シリーズに育ったといえよう。
森繁久弥氏・フランキー堺氏・伴 淳三郎氏の「『駅前』トリオ」もこの時からチームワークがよく、『駅前』シリーズ・専属の淡島千景氏や『社長』シリーズでも活躍した淡路恵子氏&草笛光子氏や藤村有弘氏・山茶花 究氏といった常連の面々が集い「森繁一家」ともいうべきスタイルが『社長』シリーズと共に確立していった。
シリーズ後期に2本撮った豊田四郎監督も、これが日本映画史上に残る名作シリーズの原点になるとは夢にも思わなかっただろう。ポスターにも、シリーズ化を前提にした(?)誤解しそうなタイトル{本当の本編タイトルは『駅前旅館』。しかし東宝発行の公式ポスターには『喜劇 駅前旅館』!}になっているのだから・・・。
あまりの暗さゆえ観るには覚悟が必要だが、原点の意識の上でもぜひ観てほしい。