森崎東監督の三作目。
タイトルからしてデビュー作「喜劇 女は度胸」に続く映画という感じがする。庶民のバイタリティが画面全体にみなぎるところは前作から引き継がれ、さらに今作は男性(渥美清や寺尾聡)のウェイトが大きい。
渥美清は今は寅さんのイメージ(それも山田洋次監督の)が強いが、役者としてはいろいろな引き出しを持ち、1960年代頃は別の顔も持っていたことをうかがわせる。山田寅さんが的屋でありながも下町の人情を表すような人間を作っていったのに対し、この映画ではもっとエネルギッシュで、バイタリティがあって、時に厚顔無恥で荒っぽい人間を演じている。この映画の前に撮られた森崎監督の「男はつらいよ フーテンの寅」の寅さん像とこの映画の「ケラ五郎」を比べてみると、逆に他のシリーズ作品のテイストとはちょっと違う森崎「フーテンの寅」のイメージが良くわかると思う。寅さんは渥美清にとって替えがたい役だったと思うが、もっと違った渥美清を見てみたかったと思う。
寺尾聡の弟は、渥美清の兄はと対照的に描かれるが、少し類型的かとも思う。寺尾聡は好演していたが、「女は度胸」の恋人との複雑で面白い絡みと比べると、展開が淡泊だったかも知れない。倍賞美津子や沖山秀子は「女は度胸」にも増して野性的で逞しいが、人間の持つ哀しみとの対比が前作に比べると若干弱かったとも思う。
むしろ、渥美清がハル坊(倍賞美津子)を良い相手と結婚させようとするが、実は自分がハル坊を愛している…それでも相手の幸せを願って奮闘する。そのおかしさと悲しさが入り混じりつつエネルギッシュにぶっ飛ばす演技が印象に残った。ウェイトとしては、やはり渥美清の重要度が大きい映画だと思う。
尚、太宰治(寅さんのタコ社長役)や佐藤蛾次郎(同じく源ちゃん役)が出ているのは寅さんファンには嬉しい。田中邦衛の意外な役、喜劇での宍戸錠、若い頃の財津一郎等、バラエティに富んだ俳優が見られる。